ネパール(カトマンズ)・インド(デリー・バラナシ)・スリランカ(コロンボ)・香港周遊。一人旅ルート計画
目次
金沢を出発して、ネパール・インド・スリランカ・香港をぐるりと巡るこの旅は、単なる周遊ルートではなく、アジアの宗教観と生死観を横断する小さなフィールドワーク。ヒマラヤの麓からガンジス河畔、インド洋の海風、そして超資本主義都市・香港へと抜けていく道のりの中で見えてくるのは、「信仰」という共通の言葉を持ちながら、まったく違う表情を見せるアジアの精神世界。
カトマンズ:重なり合うヒンドゥーと仏教
最初の目的地はネパールの首都カトマンズ。タメル地区の雑多な路地を抜けると、ヒンドゥー教と仏教がほぼシームレスに共存する風景が現れる。ストゥーパの白いドームの前で、仏教徒とヒンドゥー教徒が同じように祈りを捧げる光景は、「宗教の違い」という枠組みそのものをやわらかく溶かしてしまう。
輪廻転生やカルマへの素朴な信頼は、来世や前世を語る物語というより、「今をどう生きるか」を支える生活の実感として根づいている。ヒマラヤの山並みを背景にしたカトマンズの信仰は、「生も死も、大きな循環の一部にすぎない」という感覚を、比較的穏やかなトーンで伝えてくる。
デリー・バラナシ:生と死が交差する場所
カトマンズからインドへ飛び、デリーを拠点にタージマハルのあるアグラを往復したのち、旅は聖地バラナシへと向かう。ここでは、同じ「生と死の循環」というテーマが、ネパールよりはるかに生々しい質感を伴って迫ってくる。
ガンジス川沿いのガートに立つと、川はもはや「水の流れ」ではなく、人々の生と死をすべて受け止める巨大な媒体として存在しているように感じられる。沐浴する人々のすぐ隣で、火葬の煙が絶え間なく立ち上る。観光客にとっては「混沌」としか言いようのない光景だが、そこにいる人々にとってはきわめて日常的な通過儀礼の一場面に過ぎない。
ここで語られる死は終わりではなく、「解放」としての死だと信じられている。ガンジスに身を委ねることで輪廻の輪から抜け出す可能性がある、という感覚が共有されているからだ。生者と死者、聖と俗、観光と信仰。あらゆる境界がごちゃまぜになったまま、それでも大きな破綻なく時間が流れていく。そのあり方自体が、バラナシの「生と死の哲学」になっている。
スリランカ:静かな修行と倫理としての信仰
バラナシから南へ下り、バンガロールを経由してスリランカのコロンボに入ると、まず感じるのは喧騒の温度差だ。ここは上座部仏教(テーラワーダ)の国。街のあちこちに白いストゥーパや仏像があり、人々は仕事の合間や帰り道にふらりと寺院へ立ち寄る。
インドのような圧倒的な多神世界でもなければ、バラナシのような「死と日常のむき出しの交差」でもない。もっと静かで、個人的な修行と倫理に重心が置かれているように見える。布施・瞑想・戒律といった言葉はどこかストイックに響く一方で、境内には子どもたちの笑い声も混ざり、宗教が「社会のマナー」や「心の健康法」としても機能している。
インド洋を眺めながら過ごすコロンボでの時間は、バラナシで浴びた生と死の熱量を、一度クールダウンさせるための冷却期間でもある。「悟り」や「救い」という言葉が、劇的な奇跡ではなく、日々の暮らしの中で少しずつ積み上げていくものなのだと実感させられる。
香港:資本主義都市に残る「信じる」という行為
旅の終盤、香港に到着すると、ネオンと高層ビルに囲まれた別種の「信仰」が立ち現れる。金融市場、ブランドショップ、巨大なショッピングモール。人々が信じているのは、もはや伝統的な宗教ではなく、成長と効率と選択肢の多さなのかもしれない。
それでも街には寺院や占い横丁が残り、旧正月には街全体が宗教儀礼と祝祭で彩られる。宗教的世界と資本主義が同じ通りに共存する姿は、カトマンズやバラナシとも異なるかたちで、「現代のアジアの精神風景」を象徴している。
旅のルート一覧
| フェーズ | 区間 | 主な訪問地・拠点 | 主な移動手段 |
|---|---|---|---|
| 出発 | 金沢 → 大阪 → バンコク | 関西国際空港周辺 | 陸路+国際線フライト |
| ヒマラヤへの入口 | バンコク → カトマンズ | カトマンズ(タメル地区) | 国際線フライト |
| カトマンズ滞在 | カトマンズ市内 | 仏教・ヒンドゥー寺院エリア | 市内移動 |
| インド北部へ | カトマンズ → デリー | デリー市内拠点 | 国際線フライト |
| タージマハル往復 | デリー ⇄ アグラ | タージマハル/アグラ城 | 特急列車 |
| デリー滞在 | デリー市内 | 旧市街・市内観光 | 市内移動 |
| 聖地バラナシへ | デリー → バラナシ | バラナシ(ガンジス河畔) | 国内線フライト |
| バラナシ滞在 | バラナシ市内 | ガート・火葬場周辺 | 徒歩・市内移動 |
| 南下とスリランカへ | バラナシ → バンガロール → コロンボ | コロンボ | 国内線+国際線 |
| コロンボ滞在 | コロンボ市内 | インド洋沿いのエリア | 市内移動 |
| 香港へのフライト | コロンボ → 香港 | 香港(旺角周辺) | 国際線フライト |
| 香港滞在 | 香港市内 | 夜景スポット・飲茶エリア | 市内移動 |
| 帰国 | 香港 → 小松 → 金沢 | 金沢 | 国際線フライト+陸路 |